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コラム「自転車の謎」


自転車は違反をするといきなり「前科者」

前章「放置自転車の謎」でも触れました。が、もうちょっと掘り下げて自転車取り締まり全体の謎に迫ります。
自転車とは道交法上で言うところの「軽車両」であり、「車両等」という形で自動車や自動二輪車などと一緒の扱いを受けています。
ですから道交法に則った運転をする義務があり(左側通行、「自転車通行可」の指定がある場所以外の歩道通行禁止など)当然違反者は道交法により罰せられます。
ここまでは復習です。大事なことなので2度言いました。


さてこの「道交法に則った運転をする義務」ですが、基本的には車両と変わらず制約を受けるものが多数あります。
制約を受けないものについては「自転車を除く」とちゃんと補足表示があります
標識 一通入り口標識 進入禁止
こんなヤツです。よく見ますね。

逆に言えばこのような「自転車を除く」でなければ、道路標識には従わなければなりません。
当然これは自分の身を守る意味でもごく当たり前のことだと思いますが。実際にはほとんど無視です。そりゃ事故も増えますね。
で、その増加している自転車事故の対策として警察はまたもや「取り締まり強化」を打ち出しました。
いままで散々手抜きしておいて、事故が増えて世論も無視出来なくなったころにいきなり「自転車は軽車両です!」とか言い出しまして。
車道を走ってる自転車に向かって、パトカーから偉そうに拡声器で「危ないから歩道をはしりなさぁ〜い」とか言ってた人たちがです。


管理人は車に乗る商売してますが、バイクにも乗りますし、自転車もよく乗ります。趣味は散歩です。オールラウンドです。
別にオールラウンドでなくとも、誰でも歩行者になり得ます。その歩行者目線でも「こりゃ危ないわ!」っていう違反は確かにありますね。
一時不停止・信号無視・狭い歩道の走行、無灯火・並走・ながら運転など。
実際のところ自転車による「加害事故」は年間2万件以上もあるのです。危ないですねー。
加害でないのも含めたら全体では15万件もあるんですね。
ちなみに警察が目の色変えて取り締まっている「違法駐車」絡みの事故件数は年間9千件程度です。

自転車事故件数


さてその危ない運転をピックアップして見てみます。

信号無視
 信号無視。3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
一時不停止
 一時不停止。3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
無灯火
 無灯火。5万円以下の罰金

まあこのへんは確かに危険です。ヘタしたら死亡事故です。



飲酒運転
 飲酒運転。5年以下の懲役又は100万円以下の罰金

うん、まあ、危ないですけど。罰則がキツすぎです。



並進通行
 並進通行。2万円以下の罰金又は科料
急な進路変更
 急な進路変更。5万円以下の罰金
二人乗り
 二人乗り。2万円以下の罰金又は科料

えー、邪魔です。ちと危ないです。



右側通行
 右側通行。3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
傘さし運転 傘さし運転。5万円以下の罰金
 傘固定もNG
自転車歩道通行可
 「自転車及び歩行者専用」の標識のない歩道を通行。3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
歩道の通行方法
 歩道の通行方法違反。2万円以下の罰金又は科料
歩道の通行方法

*画像引用:京都府警HPより


このへんになってくるともう現実味がありません。状況によっては守れないケースも頻繁にあるからです。
そしてここがポイントですが、上記取締りを受けるとですね、自転車の場合は車両と違い「反則行為に関する処理手続の特例」の取り決めにより、反則金制度が適用されずにいきなり「赤キップ」なんですよ。
赤キップって車で言うところの「重大な交通違反」であり、起訴されると「前科者」になってしまうアレです。
だもんで傘差して自転車乗ったらあなたはたちまち「前科者」なんです。まーなんて非常識な法律。
だからこそ、警察はいままで自転車の違反に対してほとんど何の対策もしてきませんでした。反則金も入りませんし。
さすがに自転車のちょっとした違反で前科者にしてしまうのはいくら極悪人でも気が引けるのでしょう。
まぁ実際問題、よっぽど悪質でなければ不起訴処分になるので無駄手間だから、というのも大きいですが。
逆に言えば最初から取り締まる気などまったくゼロ!だったので除外したんでしょうね。法律の整合性なぞあったもんじゃありません。
無免許で、小さな子供から高齢者まで乗れる気軽な乗り物に反則金適用したらさすがに反発必至なの分ってたんでしょうね。


しかし自転車による事故の増加、運転マナーの低下などで自転車規制に対する世論を無視出来なくなりました。
すると突然、こんな異常な法律を改正することなく「取り締まり強化」に乗り出しました。
ですがこんな罰則があるなら、まず取り締まり以前に行政のやるべきことがあるのでは?
免許制度もなく、講習すらなく、誰でも乗れる自転車。
ルールも教えずにルールを守れって、その守るべき基準すら曖昧で、一体なにがしたいのでしょうか。
そもそも「自転車通行可」の歩道がある道路以外の車道は、自転車が安全に車と並走できる設計なのでしょうか。
そして取締りの根拠となる法律は果たして現実味があるものなのでしょうか。
現実味のない法律のまま、免許も講習もないまま、警察はまた新たな利権「自転車反則金制度」だけは作ろうと画策しています。
取り締まりはしたけれど、刑事罰じゃやっぱ重過ぎるし、件数も多過ぎて対応できないから反則金にしよう!ってワケです。
こういうタテマエを作ることで世論を誘導しやすいんでしょうね。やりたい放題もここまで来るともう犯罪レベルです。
ちなみに最近の統計では自転車に対する「指導警告(検挙ではない。ただの注意)」の件数は年間200万件もあります。
警告で200万件ですから、実際にはその数十倍は違反してますよね。これに反則金制度が導入されると考えると空恐ろしいですね。


正直な話、車に乗っていると大多数の自転車は「鬱陶しい」存在です。危なくてしょーがないし。
マナーの悪い自転車が多いのも事実です。それは車も一緒ですがね。
しかし、だからといってこんな無法な取締りが正しいハズありません。現状の自転車の問題点はほとんど行政(というか警察)の責任です。
儲からないことは全部後回しにして、道路作るだけ作って、標識付けるだけ付けて、国民の安全などハナから考えていないそのツケが今、こうやって現実離れした取り締まりで表面化するんです。
そのくせ決まっていうセリフは「危ないからルールを守りましょう」
そのルールが異常なんですけどね。



>次コラム 『歩行者の謎 〜優遇されすぎな歩行者〜』

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